富山県射水市【ひばり行政書士事務所】の仙波芳一です。
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平成30年の芥川賞候補作となっている北条裕子氏の「美しい顔」。

この作品中の表現について、他の複数のノンフィクション作品中の表現と類似しているという指摘が出ています。

そこで、同作が受賞した群像新人文学賞を主催し、『群像』に同作を掲載した講談社と、そのノンフィクション作品の一つである石井光太氏『遺体 震災、津波の果てに』を出版した新潮社との間で、論争になっています。

 

この問題は、「参考文献の記載漏れ」という形式的なものなのか、
「著作権侵害」という法的なものなのか。

 

まず、著作権侵害になるかどうかは、かなり微妙です。

その詳しい事情は、著作権問題の第一人者ともいわれる福井健策弁護士の解説が分かりやすいです。

芥川賞候補作「美しい顔」、ノンフィクションとの類似表現が独自検証で10か所超 それでも”著作権侵害”を問うのが難しい理由(HUFFPOST)

 

実際に著作権侵害に該当するかどうかは、両者の間の「似た表現」を、一つ一つ、裁判所が判断しなければなりません。

それでも、著作権を侵害していると言い切るには、かなりハードルが高いように感じます。

※具体的な表現の比較はここにもあります。

芥川賞候補「美しい顔」類似表現騒動、出版業界の甘さ露呈 被災地に一度も入らず執筆の新人のマナーは…(産経新聞)

 

これについて、講談社と新潮社が、それぞれコメントを発表しています。
著者コメントもあります。

 

■講談社
群像新人文学賞「美しい顔」に関する「経緯のご説明」を公開いたしました。こちらをご覧ください。

■新潮社
「群像」8月号、 『美しい顔』に関する告知文掲載に関して

 

ここに書かれてある経緯を見て、出版社にて書籍制作に携わっていた、私自身の意見を書いておきます。

結論から言えば、

「著者と編集者の未熟さ」

が原因だと思います。

 

著者はまだ新人。
そうすると、“参考文献”の書き方などは、分からないことが多いでしょう。

しかしそれを公の場に出すならば、問題を解消してから掲載するように整えるのは、編集者の役目。

この[編集者」の役割が、今回は、充分に果たされていないと感じました。

 

やるべきことが分からない作家に対し、編集者が適切にフォローしていれば、参考文献問題などは、すぐに解消できたはず。

 

でもそれ以上に考えてフォローしなければならなかったのは、ノンフィクション作品の作者と、取材対象となった被災者への配慮ではなかったでしょうか。

ノンフィクション作家が被災者からコメントを引き出すには、相当な苦労があったはずです。
さらにその人だからこそ、被災者も信頼して作品への掲載を認められたのだと思うのです。

それを、見ず知らずの第三者が勝手に使ったとなれば、たとえ法律上の問題がなかったとしても、憤慨するのは当然です。

編集者としては、それくらい想像できると思いますので、著者に伝え、当事者に連絡しておく等の配慮はできたはずです。

 

そういうフォローもせず、そのまま発刊してしまったのが、法的な問題以上に、大きかったと思います。

 

 

ところで、今回の事件を通じて、ネット上では様々な憶測が飛び交っています。

中でも、似通った表現に対し、「パクリ」「著作権侵害」だと言って怒っている人が多いです。

芥川賞の候補・北条裕子「美しい顔」のパクリがヤバイ!震災小説で現地にも行ったこともなく盗作しまくりの問題作が大炎上!

 

確かに、両者を比較してみると、「パクリ」と言える箇所が多数あります。

ただし、それがそのまま「著作権侵害」だと言えないことは、上記福井弁護士の解説でもお分かりのとおりです。

 

しかし、似ているからと言って、すぐにつるし上げ、違法だ、犯罪だと言わんばかりの論調は、私はどうしても違和感を覚えてしまいます。

 

相手があることについては、相手を尊重しつつ、表現の多様性を認めることは重要です。
問題がないわけではありませんが、それを克服しつつ、社会に新たな価値を届けてもらいたいと思います。

 


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